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これまで と これから

海の向こうからおみやげ持ってきた。

ワインが人生にある幸せ

 

トスカーナワインとは、大変仲良くさせていただいておりました。

 

トスカーナ州では
サンジョベーゼという葡萄で作られるワインが伝統的で、
亜種のグロッソで作る
<ブルネッロディモンタルチーノ>というワイン

 

ルニョーロジェンティーレという葡萄で作られる
<ヴィーノノービレディモンテプルチャーノ>というワイン

 

と並んで

 

サンジョベーゼで作ったワインだというと、たいていの人がすぐ
「キャンティ?」と聞き返すほど
サンジョベーゼ=キャンティと認識されている
地名でもある<キャンティ>ワイン

 

そしてそのキャンティの中でも特に
「古来から葡萄が作られていた土地」の葡萄で出来た
<キャンティクラッシコ>ワイン

 

これも地名のひとつである
<カルミニャーノ>というワインが
ボトルにDOCGというラベルをつけた、トスカーナ州を代表するワイン。

 

(全部赤です。白もあるけど、トスカーナのDOCGの白は
<ヴェルナッチャディサンジミニャーノ>というもの1つだけ・・・・
増えてなければ。 サンジミニャーノは町の名前なので
こうして見ると ぜんぶ必ず地名が入ってるね、トスカーナのDOCGは。)

 

同じ種類のワイン(たとえば<キャンティ>という種類のワイン)は
どれもみんな同じ味、ってことはない。 
同じ種類のぶどうを使っていても
会社ごと、ボトルごとに、少しずつ違う。

 

品種改良して熟成に適したものにしたり、
他の種類の葡萄と混ぜて香りも芳醇なワインになったり、
作り方の工夫や道具で、その会社独特のワインを造ったり・・・・・

 

イタリアでDOCGのラベルをつけて市場に並ぶワインは、
「熟成方法、熟成期間、混成の割合など、
定められた基準を守って作られたワイン」 だという証明で、
言わばあのラベルは品質保証みたいなものなんだけど、
イタリア人以外の
特に英語圏のワイン愛好家たちが 目の色を変えて崇拝する、
「スーパータスカンSuperTuscan」 と呼ばれる
品質も 値段も高いトスカーナワインは、
実は そのDOCGの定めた基準を無視して
独自の作り方で生まれたワイン だったりする。
(少数生産で手間がかかっているので値段が高い)

 

私の個人的な理解では、スーパータスカンて、
フランス人の赤ちゃんを
イタリア人が
イタリアの風土のなかで 愛情込めて大切に育てたら、
とんでもなく魅力的な大人になりました
みたいな感じ。
ヴィーニタリーなどの試飲会でいくつか飲ませていただいたり、
お話を聞いて、そんな感想をもった。

 

不思議なことにイタリアでは、
全体的に イタリア人よりも 日本人のほうが
ワイン好きな人が多かった。

 

ほんとの話。

 

イタリアの30代くらいまでの若い人は、
ほぼワインよりも ビール党が多い。

 

ワインを全く飲まない というわけじゃないんだけど、
別にわざわざは 飲みたがらない。
わざわざ飲みたがるのは、だんぜん日本人が多かったです。


 
でも時々 イタリア人のワイン愛好家と出会うこともあって、
私は そういう人たちと一緒に
ワイナリー見学に連れていってもらったり、
フィレンツェ市内や 地方各地で開かれる試飲会に、よく参加したりしてた。

 

イタリアでも 近年はビジネスとして、
コンセプト重視のワインを作って、
高級路線や付加価値で売りたい作り手も増えてきているみたい。

 

ワインは、たとえばトスカーナワインだと
サンジョベーゼ100%のものも多かったけれど、
他の種との混成があるかないか、
ある場合はどの種を何%混ぜるか? 
どんな土壌で育ったブドウか? 
熟成方法は? 
熟成する樽の素材は? 

 

などによって、
何百ものバリエーションがつくれる、
実はすごく
「人間の創造性とのコラボ」 が興味深くも楽しい、
魅力が多彩な飲みもの。
味わえる芸術品。

 

昔ながらの作り方で 伝統的にやっているところや、
土から無農薬の完全オーガニック という方向での付加価値を目指してるところ
葡萄の組み合わせの配合で 新しい味を創造したいというところ・・・・・

 

そのアジエンダ(Aziendaここではワイン製造会社のこと)それぞれで
哲学や、目指している方向が分かれているので、
作られているワインも、いろいろと多岐にわたっている。

 

フィレンツェの南にある、とあるワイナリー訪問にくっついて行ったとき、
真新しい、大きなガラス張りと白い壁の建物がモダン
赤と白両方のコンセプト系のキャンティワインをつくっている
そこのオーナーが話していたのは、


「3年前からうちは イギリス人のエノーロゴに任せてる。
(Enologo ワインのプロデューサーみたいな役割の人)
優秀な男なんだが、こいつが金のかかる男でね・・・・」

 

もはやイタリア人だけで作るのではなく、
才能や アイデアのコラボレーションを、国籍不問のドリームチームとして
やっているってわけか。 
そういう作業は面白いだろうな、と思った。
意見が割れた時まとめるのは、大変そうだけどね。

 

イタリアでたくさん飲んだなかで
私が特に心魅かれたのは、
「豊かな香りのワイン」たちだった。

 

試飲会などで出会って、美味しい、と思ったら、
なるべくそのワインの情報を聞くようにしていた、
後から自分で見つけることが出来るように。
素敵だな、と思った人の名前は覚えておくものでしょ?(笑)

 

赤は ヴィーノノービレディモンテプルチャーノやアマローネ、
白は ゲヴェルツトラミネールやケルネルという、ドイツ名を持ったワイン。
(赤は「ワインの種類」の名前だけど、白はぶどうの名前)
これらの名前で選んだワインは
どれも自分好みの美味しさで、はずれがなかった。

 

もちろん ワイン名や エチケット(ラベル)で覚える時もあったけど
それだと 新しいワインとの出会いのバリエーションが広がらない気がしたので
自分の好みを 自分で説明する時には
何社のなになに、という直接的なワイン名より、
こういった種類名を伝えてた。

 

それを憶えておくと 試飲する前に
「そのブドウで作られた味なら、わたし好きかも」
という予測もできるようになったり、
旅行先などでワインを買うときに

 

「私は香りの良いワインが好きなんですが・・・」
「たとえば?」
「ノービレとか、アマローネとか・・・」
「それなら、これなんか多分お好みですよ」

 

とお店の人がすぐにピンときて、
本当に私好みに近い 適切なアドバイスをもらえたりした。

 

ロザート(ロゼ)も好きなんだけど、
プーリアで BIOので、あんなに美味しかったやつ、色もきれいだったのに・・・ 
メモを失くしてしまって、
今となっては どこの何というロゼワインだったのか分からない・・・・・ 
ズボラな子は損をしますね。

 

とても印象的なワインのことを憶い出した。

 

ある年の初夏のころ、
フィレンツェのワイン店(エノテカ)の試飲会で飲んだ赤ワインが
びっくりするほど、
ほんとうに、
すごく美味しかった。

 

香りも、味わいも、とても深く 豊かで
多くのものを含んでいる様で、
どこか複雑なのに、見事に融合してる感じで・・・・・


 
なんて美味しくて素敵なワインだろう、
こんなワインは初めてだ・・・・ と感動して、
作り手の親子さん(父親さんと息子さん)に、
どんなふうに作っていらっしゃるのですか
と聞いてみたら、


サンジョベーゼ100%で、
アッチャイオ(acciaio ステンレススチール)の樽で熟成してる
との話。

 

ふつうワインは木樽で熟成させると
その木の香りや、
それまでその樽で作られた 過去のワインの記憶などが混じって
より深みのある味わいになったりするけれど、
ステンレス樽は さっぱりした白ワインを作るときなど
味わいに複雑さを求めない
そのぶどうだけの味や、新鮮なフルーティさを求める用途で使われる
と聞いていた。

 

でもそのワインの味は さっぱりなどしていなかった。

 

香りにも、口の中にも、さまざまなものが感じられるほど
複雑に、それでいて芳醇な豊かさ、奥深さが感じられた。 

 

たった一種類のぶどうで、アッチャイオで作ってて?

 

いったい何故なのかわからなくて、
「その作り方で何でこんなに複雑で繊細な、すてきな香りと味になるんですか?」
と驚きながら、更につっこんで聞いたら、
お父さんのほうが 笑顔になりながら教えてくれた。

 

「私たちの畑の葡萄は、もう何十年も前から実をつけている古木なんです。
人間が何もしなくても、葡萄の木が地中深く、広く張ったたくさんの根っこから、
土のなかのさまざまな花や ミネラルなどの成分を吸い上げて、
成る実にそれをたっぷりと含ませてくれる。 
このワインの味わいは、そうやってできたものです。」

 

人間のすることが最小限で、
<樹のちから>で出来上がるワインの味もあることを、初めて知った。

 

ぶどうの実の味をそのまま出したいから、アッチャイオの樽なんだ・・・・・

 

古木の根っこに信頼を置いて、
人間は 環境を手入れするだけで、
味に対し 余計なことをしない。

 

そういう決定をして、それを本当に実践するのは、
実はそう誰にでも出来ることではないんじゃないだろうか、
ビジネス上・・・・
自然を信頼し、尊重して、
人間は自然とコラボレートする立場、という姿勢なんだろうな。

 

この作り手さんたちは凄いなぁ、と感服したし、
同時にとても尊敬した。

 

そのお話を聞いたあとで、もう一度口に含んでみたそのワインは、
ほんとうに <世界にただひとつの味> に思えた。

 

ワインの楽しみは奥深くて
味わうことの他にも、
新しいことを知る喜びも 与えてくれる。

 

ワインを含め 「食を楽しむ」 ことは、
私がイタリアで、多くの体験と実感と共に知った
「人生をより深く楽しむ味わい方」 のひとつ。

 

 

 

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