これまで と これから

海の向こうからおみやげ持ってきた。

イタリア男の真髄・・・?

 

ある夏の日の午後、町なかのバス停で、なかなか来ないバスを待っていた。

  

イタリアの夏は、太陽の光が強い。

 

「強い」 なんてもんじゃない。

 

ローストされる。
熱線で。

 

日本に帰った時とかに、友達がよく、
「イタリア人て シエスタとか言って、昼寝しちゃって働かないんでしょ?」
なんて聞いてくるときがあったけど

 

実際に住んでみるとね、

 

人間が、あんな強い太陽光線の下で、
いったいどんな生産活動ができるというのですか?


と真顔で聞きたくなるような、
日本では想像できない 照り付け方なんですよ。

 

サングラスも、彼らべつに恰好つけてかけてるわけじゃなくて、
あれがないと まともに目を開けていられないし、
光でまぶしくて、ものの形がよく見えない。

 

アジア人の黒い目は大丈夫という人もいるけど、無理無理無理。

 

「大丈夫」と言ってる人は自覚がないのかも知れないけど
たとえ黒い瞳だろうと、
サングラス無しで昼間、何時間も外に出掛けたら、
夕方にはぜったい目や頭が痛くなってると思う。

 

真夏の いちばん太陽光の強い時間帯には、
どうせ人通りもないから 店を閉めて、
その代わり夕方から また再開して、
閉店時間を少し遅めにする という営業時間は


普通に考えれば 自然に行き着く結論で、
とても理にかなっていると思った。

 

午前中、すでに強い太陽の下で数時間働いたから 
ぐったりとして寝てしまい、
午後に備えて体力を回復してる人もいるんだろう。

 

べつに怠けるためじゃないと思うよ。

 

昼食は家族でゆっくりと という食習慣も関係あるとは思うけど。

 

私が知る限りでは、フィレンツェ
昼食後に本当に横になってる人は 一人も見たことなかったし、
初期の頃、イタリア人の友達に
「やっぱりみんな昼寝してるの?」 と聞いてみたときも、
「おじいちゃんはね」 という答えなら聞いた程度。

 

90年代までは、お昼に数時間閉めるお店はまだ多かったけど、
EUになってから(←語弊のある書き方ですが) のイタリアでは、
お店もシフト制で 昼休みなしの、ノンストップ営業が主流になった。

 

とにかく フィレンツェの夏の昼どきなんて、
日陰を選んで歩かないと、歩いているだけで体力が奪われる行為なので、
出歩く人もいないせいか、バスの本数も少ないのでした。

 

それでも用がある時は仕方ない。

 

早く来ないかなぁ とバスが来るはずの方向を見ていると
5m幅くらいの車道を挟んだ、向こう側の通りに
よちよちとこちらの方角へ歩いてくる 小柄なおじいさんの姿が目に留まった。

 

おじいさんが歩いている側は 今は日陰になっているから
私が居る側の日向に比べればまだマシだけど、
「暑いのに、おじいさん大丈夫かな」 と心配になった。

 

おじいさんは目線を下にして 足元を見ながら歩いてるんだけど、
時々顔を上げて、何歩かはそのまま歩いたりもしてた。

 

フィレンツェの歴史的保護区の道路は
歩道のほうはアスファルトで舗装されているけど
道路は昔ながらの石畳で、
ガタガタで、ひどく歪んでいることが多く、
車ならともかく 人が歩くときは 注意して歩かないと
足をくじいたり 転んだりする危険もある。

 

いきなり、そんなガタガタの車道に、おじいさんが下りた。

 

こちら側へ渡る信号があるところまでは まだ距離があったから
このへんで渡っちゃえ と思ったのか、
全くの道路の真ん中で危険なのに、
しかも ジリジリと照り付ける太陽の下を
よちよちと横切り、こちら側へ歩いてくる。

 

おじいさんは、この停留所でバスを待つのかも知れなかった。

 

車が来ないといいんだけど・・・ と気が気じゃなくて、
おじいちゃんから目が離せなかった。

 

車は来ず、転びもせず、おじいちゃんは車道を無事に渡り切って、
こちら側の歩道に上った。

 

歩道に上がってからずっと顔を上げたまま、まっすぐに
私の前までやってきたおじいちゃんは、
私の顔を正面から見ながら、大きな声で そして 満面の笑顔で

 

「セイ ベッラ!(Sei Bella!  君はきれいだ)」

 

と一言いうと、
くるりとそのまま踵を返し、
再び 石畳ガタガタの車道へ下りると、
よちよちとまた、通りの向こう側へと戻って行った。

 

・・・・・・・・・え?・・・・・・・・

 

暑さのせいで思考力が弱っている頭で、
今起きたことを脳内処理し 理解しなければならなかった。

 

あのおじいちゃん、「おまえ美人だな」 
あるいは もっとロマンティックな言い方をすれば 「あなたは美しい」
の一言を言うためだけに
日陰側の歩道を下りて 足場の悪い車道を横切り、
照り付ける太陽にもめげず、ここまで来たの?

 

起こったことだけ見れば、そういうことらしかった。
すぐにまた向こう(日陰)側へ帰っていったわけだし・・・・

 

 

なんなんだ、じいちゃん!?

 

 

いまいちよく分からない行動だったけど、それがイタリア男ってもんなんですか?

 

褒めてもらった嬉しさなんてモノより、
とまどいしかなかったですよ・・・・

 

これが、イタリア男の真髄というものなのか・・・・・・?

 


謎である。