読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

これまで と これから

海の向こうからおみやげ持ってきた。

あるアフリカのお父さんの決断

人びと

 

悲しいお話。
ミラノに住んでいた、アフリカ出身の若いお父さんと 幼い息子さんの親子。

 

たしか2010年前後のことだったと思う。
移民で来た親子なのか、難民で来たのか、どの国籍なのか等の
詳細は憶えてないけれど
その若い父親は、滞在許可証の問題を抱えていた。

 

イタリアでは EU圏外の外国人が長期滞在するには、
正規の条件を満たした上での
滞在許可証の取得が義務付けられてる。 


滞在目的によって必要書類などの条件は分かれていて、
たとえば留学目的なら、イタリアの学校が発行した入学許可書や
授業料を(一部でも)支払済みだ という証明などで、


労働目的なら、その外国人を雇用するイタリアの会社側が用意する書類や、
個人事業主として申請する場合でも ビジネスの内容で 様々な必要書類がある。

 

それらの書類は 「審査してもらうための」 書類であって、
申請すれば必ず許可が下りるわけではない。 

 

イタリアでは外国人は、ただ働きたいという熱意だけでは
全く受け入れてもらえない。

 

一度は労働許可が下りたとしても、
解雇されたりしたら、
現行の許可証の有効期限までに再就職先を見つけなければ、


あるいは自営業でも
職種によって定められている税の最低額を納められなければ、
許可証の更新は出来ない。

 

滞在許可が下りない場合は、それがはっきりした日から2週間以内に
イタリアから出国すべし。


それ以降は不法滞在者身分となる・・・・・

 

そのアフリカ人の父親は、滞在許可の期限が迫っていたけれど
雇用契約をしてくれる仕事が見つからず、
子供も居るし、仕事は必ず見つけるから 
とりあえず滞在許可証を更新してほしい と懇願しても 
却下されたらしい。

 

どのように、どれほどの期間、当局とやりとりをしたのか、
このへんの事情の詳細は、報道されてたかどうかも はっきり憶えていない。

 

ただ、この父親が最終的にとった解決方法・・・・・・・

 

「どうか息子がイタリアに在留できるようにしてほしい」
という手紙をミラノ市長宛てに残し、
彼は自殺した。

 

イタリアでは 両親の居ない13歳未満の外国人の子供は保護される

この父親は それを知っていたのだろう。 


幼い息子に人生のチャンスを与えるため、こんなかたちで
<正規の条件> を整えた。

 

当時のミラノ市長は たしか女性だった。
この件について彼女は ノーコメントというコメントを出したけれど、
彼女が悪いわけでも、
何か出来たわけでも なかったんだと思う。

 

私も「イタリアに住む外国人」だったから、
滞在許可証の問題は 人ごとじゃなかった。


正規契約をしてくれる職場は
フィレンツェでも 見つけるのは とても大変だった。

 

あのお父さんには、国に帰るという選択肢は 最初から なかったのだろうか。
それがどんな事情なのかは 知る由もないけれど、
最終的に彼が行った選択、そして決断は
あまりにも重いものだった。

 

そんなにも愛した息子なら、ずっと傍で成長を見守りたかっただろうに・・・・・

 

悲しいし、辛すぎる。
このニュースを知った時は 胸が痛くて、
お父さんも 子供もかわいそうで、 切なすぎて、やりきれなかった。

 

不法滞在者になることをよしとしない、誇り高いお父さんだったんだね。

 

不法滞在者なんて たくさんいるのに。

 

嘘をついたり 誤魔化したりしながら そこに住み続けようとする「外国人」は
きっと先進国なら どこにでもいるのに。

 

自分の息子も 不法滞在者にはさせなかった。 
合法的に、堂々と その国で生きていけるようにした。

 

なぜ ちゃんと決められた法を守ろうとする善人は 
こんな風に消えて行かざるを得ず


ルールを守ろうとしない無法者がむしろ気楽に、
気ままに 人生を過ごせるのだろう。

 

その男の子はその後、どこでどんな風に育っているのか、
幸福でいるのか、気にかかる。

 

お父さんが命をかけてそう望んだように、
イタリアで ちゃんと教育を受けられて、
心身ともに 健康に育っていて欲しい・・・・・
と祈る。