これまで と これから

海の向こうからおみやげ持ってきた。

うつくしいひと<浅田真央さん>

 

初めて彼女の名前を耳にしたのは、
日本への一時帰国からフィレンツェに戻ったばかりの友達たちと 
カフェでお茶をした時だった。

 

「日本にはいま、まおちゃん という
15歳くらいの、可愛らしくて でも ものすごい才能をもつ
フィギュアスケート選手がいて
今度のオリンピックに出そうだったんだけど
年齢が若すぎて 出られなかったんだよ。」 と聞いた。

 

イタリアでは、日本と違って
ケーブルTVのスポーツチャンネルでも契約してなければ
オリンピックその他の試合の様子を詳しく観ることは出来ないから
フィギュアスケートを観るのは好きでも  
イタリアに居たあいだ、浅田真央選手の活躍を見る機会は 私にはなかった。

 

日本に帰国した後にようやく 浅田選手だけでなく
他にも多彩な それぞれ才能と魅力に溢れた 若いフィギュアスケート選手たちが
活躍していることを知って 試合等のTV番組を よく観るようになった。

 

真央さんの たたずまいというのか、
インタビューされている時の 彼女の落ち着いた話し方、
誠実な受け答えなど、
「今どきの」同世代の人たちよりも大人びて見えるその姿は いつも
まっすぐで凛としたまなざしと
時折見せる 愛らしい笑顔とが
彼女の人となりを語っているようだった。

 

私は声フェチなので (声と 話し方フェチ)
その面からも 真央さんのファンだった。
アナウンサーですら、長く聞いていたくない声、しゃべり方、の人が多い昨今
女性らしい愛らしさと でもどこかしら芯の強さも感じられる きれいな声で
品のある話し方をする人は
私にとっては イラン人のサヘル・ローズさんと 浅田真央さんだった。

 

ソチ五輪での あの ドラマティックな彼女の演技。

 

ショートの作品も 本番での苦い経験で、彼女にとっては
辛いプログラムになっていなければ良いな・・・ と願う。

 

だって、あのショパンの曲の作品は
彼女の優美さと愛らしさが、本当によく表現されてたプログラムだったから。
どこかの外国の解説の入った 五輪以外のときの映像を観たこともあるけど
最後の部分で 解説者が思わず 「あの腕の動き・・・!」 と
そのしなやかな表現力に 感嘆していた。

 

そして フィギュアスケート史だけでなく
おそらく 全オリンピック史のなかでも
ずっと 「最も印象的な場面」「選手」のひとつとして語り継がれるだろう、
フリーの あの演技。

 

あのときは 私も
夜中に目覚ましをかけて 起きてライブ中継を観ていた。
前日のショートを そうやって観て
たぶん日本じゅうが ショックを受けて

 

それまでは TVのなかの人に
そこまで思い入れをすることなんか 一度もなかったのに
あのショートプログラムが終わってからの24時間、
不思議なことに 私はときどき 
遠いソチの空の下にいる真央ちゃんは いまどんな気持ちでいるだろう・・・・ と
何度か彼女に 想いを馳せた。

 

フリーで いよいよ彼女の番がきたとき
私は 両手を組み、下唇を噛みながら 
祈るようなポーズで 画面を見つめていた。

 

彼女が 息を大きく ふうーっと吐き出して
覚悟を決めた表情で 準備の位置に収まると
私も 見届ける覚悟を新たにした。

 

あれは 音楽も、振り付けも、 
荘厳 かつ 優雅で
力づよく 
彼女にしか成し得ない技術の粋を集めた
凄いプログラムで、

 

あの ラフマニノフの音楽でなかったら
あの タラソワさんの振り付けでなかったら
そして
オリンピックという舞台でなかったら

 

あそこまでドラマティックな作品には ならなかったかも知れない。

 

彼女は凄かった。

 

圧倒的だった。
演技が進むごとに より強い磁場でも形成していくようだった・・・・
彼女自身が 強い磁力となって。

 

全種類8回(調べずに記憶で書いてるので間違ってたらごめんなさい)の
三回転ジャンプを、全て 同一プログラムのなかで成功させ
緊張感も 疲労も いちばん苦しくなるだろうタイミングなのに
見事なスピンから 最後の 難しく激しいステップに入る時には
私の目はもう 涙で滲んでて 
伝説になるであろうこの演技の すべての動きを見逃さないよう
ぱちぱちと 急いでまばたきをした。

 

彼女は本当にすごかった。

 

いっさい手を抜かず、
どのステップにも コントロールと 全力での表現が成されていた。 
人間にこんなことが出来るんだ って思った。 大げさでなく。
こんなに若い、細い身体の女の子が
こんなすごいプログラムを ここまで完成出来るんだ って・・・・

 

審査員たちの前を過ぎ、着水する鳥のように入っていくスパイラルは
<Perfection>の 体現だった。

 

演技が終わって
彼女が一瞬こらえた涙は 当然 流されてしかるべきものだったと思う。
きっと あの演技を目にした全員が 
全世界が 
そう思ったに違いない。

 

彼女はすぐに笑顔になった。
後になって どこかのWebページで 中国人の真央ちゃんファンの人が
「雨のあとの虹のような笑顔」だと言っていた。

 

すてきな表現だと思った。

 

これからは いつか
自分で自分の頬っぺたを叩いて「しっかりしろ」と言いたくなるような時は
真央ちゃんの この ソチでのフリーの演技を観ようと 心に決めた。

 

彼女は闘った。  
挑戦した。 
ファイターだ、ほんとうに。

 

怖くても 不安でも それでも 自分のちからでそれを抑えつけ
覚悟を決めて挑むということ

 

失敗は 「挑戦した者だけが出来る」ことで 
失敗すら出来ない、決して挑むことが出来ない臆病者は
失敗というものに対して 何ら語る言葉を持たない。

 

彼女は挑んで、成功させた。
前日の失敗のあと倍増したはずの 巨大な恐怖に打ち勝って。
誰も知りえない多くの時間と 汗と 涙を 
信じられないほど完璧な <結晶> に変えて。

 

彼女は美しい人だと思う。
その姿も 心もちも 在り方も すべてが。

 

浅田真央さん・・・・選手生活、お疲れ様でした。
数々の素晴らしいオペラ(Opera イタリア語で「作品」)を
どうもありがとう。
あなたのファンたちは あなたのご多幸を心から願うと共に
あなたがそうしたい時に ショーなどでまた
あなたの優美な氷上の動きと 愛らしい笑顔に
いつでも出会いたいと 思っています。

 

 

 

 ショパンのほう♡

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