これまで と これから

海の向こうからおみやげ持ってきた。

フィレンツェ空港の謎のアジア人

 

あるとき 日本に一時帰国するために、
早朝 フィレンツェ空港にいた。

 

フィレンツェからは 日本までの直行便は飛んでいない。 
イタリア国内の大きな空港か ヨーロッパのどこかの空港で、
日本行きの飛行機に乗り換える必要がある。

 

ちなみに私はANAをよく利用してた。 
日ごろ恋しく感じている日本語の活字(新聞、雑誌)が多くあり、
それを読めるだけで嬉しいし
(たまに親から送られてくる小包の中の緩衝材代わりの新聞なんか、
皺を伸ばして、隅から隅まで全部読んでた)
映画も日本語だし
Alitalia(アリターリア イタリアの航空会社)みたいに 
しょっちゅう 座席のモニターが壊れてて映らない
なんて心配もないし・・・・
(ほんとなんですよまったくもう (-‘’-;)
そりゃ 飛行機の窓から景色眺めるのも好きだけど
結局のとこ、ワイン飲んで約11時間ふて寝するしかない★)

 

ANAだと経由は フランスのシャルルドゴールか、
ドイツのフランクフルトか ミュンヘン空港が主。

 

そのなかでも私は ミュンヘン経由がいちばん好きだった。 
いちばん体がラクだったし、
空港もコンパクトで 機能的にまとまってて
広すぎないから 迷う心配(笑)もなかったし、

 

ドイツへのルートは アルプスの真上を飛ぶから、
明るい時間だといつも 
アルプスの雄大で、まっ白いパノラマを
上空から という珍しいアングルで楽しめたので。

 

でもこの時は フランクフルト経由。


いつもエアチケットを取っている代理店の人に勧められて
たまには趣向を変えて トランジットで半日、
フランクフルト観光をする予定で エアチケットを取っていた。
フランクフルトに 特に興味を持っていたわけではなかったけど
ゲーテが生まれ育った家があると聞いて、
それなら見てみたい と思ったから。
(良い半日を過ごせました♪)

 

さて
早朝便だったので、人はほんの数人しかいなかった。
お店も バールしか開いてない時間だったし、
その頃のフィレンツェ空港はまだ 建て替え前の旧施設で、
年季の入った金属製のベンチ以外 とくに何もなく
がらんとしていた。

 

そこへとつぜん警察官が一人 待合スペースにやって来て、
「この中に日本人はいないか」 と言った。

 

私以外に日本人らしい人は居なかった。 
スーツ姿の、イタリア人のビジネスマンぽい男性と、
黒人の男性と、
眠ってる子供を抱っこした やはりイタリア人と思われる
お母さんと、お父さんの家族。

 

「シィ、ソノ ジャッポネーゼ・・・」 Si, sono Giapponese….
はい、わたし日本人ですが・・・・ 
と言って、
いちおう 自分のパスポートを掲げて見せながら
その警察官へ近づく。

 

「ちょっと、助けてほしいんだが。 一緒に来てくれ」

 

そう言うと警察官は 
私を すこし離れた場所にある別室へと案内して行きながら、

 

「自分は日本人だというラガッツォがいるんだけど、
我々としては疑わしい。
(Ragazzo「男の子」の単数形、「女の子」はラガッツァ) 
パッサポルト(Passaportoパスポート)を見せて、と言っても
イタリア語も通じない。
本当に日本人か、日本語で何か聞いてみてくれ。
彼が何をしたいのか、状況もわからないんだ。」
と説明してくれた。

 

へー・・・・? と思いながら、
オカピート、ダッコルド(Ho capito, d’accordo. 
わかりました、了解です)」と返事をする。

 

部屋には 他に2名の警察官と、
小柄な、私の印象としては
映画<オーシャンズ11>に出てた中国人に
やたら明るい にこやかな、愛想の良い顔を載っけた感じの
アジア人男性が 一人いた。

 

その男性はすごい笑顔でニコニコしながら、
何かよくわからない短い言葉を、繰り返し言っていた。

 

私は、
「おはようございます。大丈夫ですか?
何か問題なんですか?」
とその人に聞いたけれど、反応は特にない。 

 

私の方にもニコニコと愛想の良い笑顔を向け、
同じ短い言葉を言ってくるだけだ。

 

困って警察官を見ると、
「日本語で、もっと他の事を聞いてみてくれ」
と言われたので
「あの、日本ではどちらにお住まいなんですか?」
と重ねて聞いてみた。

 

けれどその人は、
はい、はい、とでも言うように
しきりに頷いて ニコニコしてるだけで、
私の言っていることが通じているようには見えない。

 

「あの・・・お名前を伺ってもよろしいですか?」 と聞いても
「フライトの時間は、まだ大丈夫ですか?」 と聞いても
白い歯を見せた笑顔のまま
しきりに頭を ぺこぺこと下げて、 ッペン だか ッパン
といったような、短い言葉(?)を ただ何度も 繰り返していた。

 

私も 一生懸命集中して その音を聞き取ろうとはしてみたけど 
やっぱり何もわからないので 
匙を投げて
「失礼・・・・でも私は、この人は日本人じゃないと思います。
少なくとも 彼がしゃべっている言葉は 日本語には聞こえないし、
この人は私の質問に答えてくれません」 
と警察官たちに言うと、

 

「OK、グラツィエ、シニョーラ」
と言われ、最初の警察官が扉を開けて、元の場所まで送ってくれた。

 

私よりも背の低い、おそらく150cmそこそこの 細身で小柄な男性・・・・
東南アジアの人かも知れないし、中国人かもしれないし
どこか他の国の人かもしれないけど・・・・
とりあえず アジア系ではあったと思う。 
ちなみに肌の色は どちらかというと 白かった。

 

なんだったんだろう、あの人? 
警察官たちも、あのあと結局 どうしたのかな。 

 

彼が繰り返していたあの短い言葉が、警察官たちにはどうやら 
ジャパン、ジャパン、と言ってるように聞こえたらしいけど、
私には よくわからなかった。 

 

あのやたらのニコニコ顔も 今思えば、
焦りまくった状態を 笑顔でなんとか切り抜けようとする 
ニコニコ顔攻撃だったのかも知れないなあ・・・・

 

イタリアに住んでいる間、こんなことは このとき一回きりで、
後で他の在住者の友達たちにも聞いてみたけど、
同じような体験をした人は 誰も居なかった。

 

  

なんだか珍しくも不思議なものを 見学させてもらいました。